■

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

近頃、フェロモンっていうのは、｢二人だけ｣で何かしてみたいと
相手に思わせる力なのかなと思う。
例えば飲み会の最中隅っこでしみじみ話してみたり、
ばったり会った時にお茶に誘ってみたり。
約束をとりつけてわざわざ二人で会おうって程の仲じゃないのに、
相手にそういう気持ちを持たせてしまうような。
どれだけしょうもない人でも周りが放っておかない人。
ニシノ君の話を読んでいて、そんなことを考えたことを思い出した。

ニシノ君は本当にどうしようもない男だ。
｢人を好きになれない可哀想な僕｣をやたらと悲劇化して酔って、
変わる気なんか毛頭ないくせに、同情やら甘やかしが欲しいだけで
嘆いて見せる。
それでもニシノ君の周りの女の子達は彼の傍においてもらえることを
（たとえ不本意だったとしても）喜んでしまうのだから
馬にけられるより他ない。
最後に彼の元を去る決断を下す彼女達の気持ちは察するに余りあった。

以下、ちょっとネタバレ。

ニシノ君は最後にはその力を失っていたから、
物語はああいう結末になったのかな、と思いました。